2014年1月1日星期三

【舩越園子コラム】米ツアー予選会に挑む岩田寛に拍手!




2013年11月04日11時58分
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ウエブドットコムツアーの予選会に挑戦している岩田、理由は「アメリカに行きたい」から(撮影:上山敬太)






 岩田寛が米ツアーのクオリファイングトーナメントに挑戦している。ツアーに出るための出場権を競い合うクオリファイングトーナメントは、日本ではQT(予選会)という呼称が一般化しているが、米ゴルフ界では昔も今もQスクールと呼ばれている。

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 その米Qスクールは、2012年までは合格すれば米ツアー(PGAツアー)の出場権が手に入る、いわば一発勝負の登竜門という位置付けだった。

 だが、昨年から今年にかけて実施された米ツアーの大幅なシステム変更に伴い、今年からQスクールは米ツアーの下部ツアーであるウエブドットコムツアーへの登竜門に変わった。つまり、今、岩田が挑戦しているのは「合格すればウエブドットコムツアーに出場できる」という道だ。

 その道は、米ツアーへの登竜門だった昨年も、ウエブドットコムツアーへの登竜門となった今年も、とんでもなく長い長丁場であることに変わりはない。たとえば今年は、3日間のプレ予選が8月末から9月上旬にかけて全米6会場で行われ、プレ予選を勝ち抜くと、次は10月に全米12会場で行われる4日間の1次予選、11月に6会場で行われる4日間の2次予選、そして最後は12月12~17日にカリフォルニア州PGAウエストで行なわれる6日間の最終予選へと進むことになる。すでに世界6大ツアーでの実績がある選手は、そのステータスに応じてプレ予選や1次、2次予選が免除されるのだが、何のステータスも持たない選手は最大で合計17ラウンドを勝ち抜かなければならず、勝ち抜いても出られるのは米ツアーではなく下部ツアーなのだから気が遠くなりそうな話ではある。

 けれど、モノは考えようだ。米ツアーや下部ツアーに何の足がかりも持たず、何の経験もなく、スポンサー推薦を得ることが難しい選手たち、いわば「失うものは何もない」ゴルファーたちが、とにもかくにもエントリーして、プレーして、勝ち残れば、下部ツアーへ、果ては米ツアーへと歩を進めていく突破口が得られるわけで、時間はかかるが、チャンスでもあると言えるわけだ。

 岩田は松山英樹池田勇太らの先輩に当たる東北福祉大ゴルフ部の出身。2004年にプロ転向し、日本ツアーで戦ってきた。32歳になった現在まで勝利を掴んだ経験は残念ながら一度も無いが、優勝経験は無くても、彼には挑戦意欲がある。

 今回の米Qスクール挑戦に対して岩田は「単純にアメリカに行きたいから。今までずっと挑戦したいと思っていたけど(日本の)シード権が決まらなくて挑戦できなかった。今年は早い段階で決めることができたので挑戦することにした」と、あたかも初挑戦のように語っているのだが、知る人ぞ知る、実は彼は08年にもQスクールに挑んでいた。

 08年のときは、合格すればそのまま米ツアー出場権が手に入った最終予選を戦った。が、結果は惨敗で、米ツアーはおろか、下部ツアーの出場権すら獲得できずに終わった。その悔しさや心残りも今年の岩田の背中を押したのだろう。

 そんな岩田の32歳の挑戦を、日本のゴルフ関係者、日本の他選手たち、そして日本のゴルフファンのみなさんは、どう受け止め、何を思いますか?

 スポット参戦を経てノンメンバーからメンバーへと進んだ石川遼松山英樹の歩みは、いわゆるエリート街道で、誰も彼もが同じ道を辿れるわけではない。その反面、Qスクールはどのツアーへの登竜門であるかはさておき、険しいけれど誰にも公平に開かれた道だ。

 しかし、岩田が挑んだ08年あたりを境に日本人はQスクールにエントリーすらしなくなった。石川と松山以外に米ツアーを目指そうと腰を上げた日本人選手は誰もいなかった。

 そんな中、「単純にアメリカに行きたい」という理由であれ、「日本のシード権が早く確保できたから」という安全パイ確保の上での挑戦であれ、たとえ何であれ、誰もアクションを起こさない中で岩田だけはアクションを起こしたことに大きな意義がある。

 アクションさえ起こせば、その先には何かがあり、何かが起こる可能性がある。見たことがない景色は、想像しているだけなら決して想像の域を出ることはないが、いざその場に行って直に眺めてみたら、目の前の景色は往々にして想像とは異なるものだ。何がどう転ぶか、何がどう変わるかは、やってみなけりゃわからない。百聞は一見にしかず。行くこと、やることで、何かが動く可能性が出る。

 岩田は10月の1次予選を勝ち残り、一旦帰国して日本の試合に出場。今月、再渡米して次は2次予選に挑む予定だ。そこで勝ち残り、最終予選へ歩を進めることが決まれば、その時点でウエブドットコムツアー出場権は確約され、12月の最終予選では来季の出場優先順位を競い合うことになる。

 かつて5年間の下部ツアー参戦を経て米ツアーに昇格し、米ツアーで1勝を挙げた今田竜二も、岩田の挑戦にエールを送っている。「ウエブドットコムツアーは賞金が安く、異動範囲は広く、そして選手層は厚い。でも挑戦しがいのある場所でもある。30歳代での決断はすごい」。
 
 もちろん結果に期待したいが、ともあれ、アクションを起こした岩田に拍手だ。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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